今更・・・とは思いながらも読んでみました。
2016年5月出版ですが、この時点でアメリカデラウェア州のことを「最強のタックスヘイブン」と書いてます、やっぱりそういう認識のようで。
※ 本の内容途中では何度か繰り返されるが、地図ではなぜかここでしか記入されていない。
タックスヘイブンは主に富裕層の租税回避地としての意味合いを指す言葉。そこにペーパーカンパニー等々を置いてお金をプールし、課税を逃れる、までは広くしられていますが、その後に大金をどう移動させる、どう元の手元に戻すの?となると難しいところだそうです。
掲載されている回答例として以下のものが挙げられていました。
(1)は住宅を購入したり大きいクルーザー買ったりするのでしょうか。小さいものでもクレジットカードを所有して使うなど考えられますが、足がつきそうな気もします。
(2)はいろいろ経由する必要がありそうですが、それができるならば可能そうです。
(3)に関してはオバマもトランプも1度実施していたと思います。アップルがアメリカ外にある大金を戻すかどうかが注目されてましたがその後どうなったのかな・・・。景気刺激策になるとはいえど、富の再分配視点からするとどうなのかなとも思います。
中盤の内容では”超富裕層”の実際のスキーム解説です。関係ないのでさっと飛ばし読みしましたが、「モサック・フォンセカから流出したパナマ文書の顧客の三分の一は中国・香港」「習近平も顧客で利用してたため中国ではパナマ文書関連は閲覧できない情報統制」「セコム創業者が親族へ財産を移す際に、当時の贈与税70%を回避するためタックスヘイブンペーパーカンパニーを経由し所得税として支払い節税、一旦申告後に修正申告で長者番付に乗らないようにした」などなど。武富士の解説もありました、”争点にならない部分”の話は面白かったです。
途中、タックスヘイブンが作られた経緯などに触れられていました。イギリスが作り、アメリカが被害を受けた歴史だそうですが、現代では逆になってる感がします、それでもそれまでの60年は栄華を極めたのかもしれません。
「なぜケイマン諸島なのか」という理由にもふれられていて、勝手に思うところ「バックにイギリスがおり制度崩壊しない」「自国通貨をポンドではなくドルとリンクするケイマンドルとした」「アメリカと反発した歴史がある」「銀行機密法」「国家情勢的に安定」「国際金融センター」などなど。
日本企業の多くがケイマン諸島のタックスヘイブンを利用する理由がわからなかったのですが、こういうことだったのね、と理解できます。
最終章は「そして世界は超格差社会となった」はもう、はいそうですね、と感じつつも、本書最後の締めの言葉は確かに真実だなと思いました。
CRS加盟国がどんどん増えてるので富裕層の行き場がちょっぴり狭まってる2018年末ですが、アメリカ vsイギリス、そしてそれぞれが支えるタックスヘイブンという構図を知った良い本でした。
麻生太郎の答弁を準備した官僚さんはきっとオバマの答弁調べたんじゃないかな、と思う写真。
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